断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
序章

第1話 婚約者指名まであと一年

 わたしは森華子。見た目も中身もバチバチの日本人。
 なのにわけあって、今はハナコ・モッリとして公爵令嬢なんかをしている。

(――まずい、山田だ)

 人もまばらな放課後の図書館で、吟味(ぎんみ)していた本をそっと棚に戻した。

 周囲には人影なし。ここで見つかったらやっかいだ。奥に進み、じっと身をひそめた。

 少しずつ靴音が近づいてくる。カツカツとやけに大きく響かせながら、山田はわたしのいる本棚の横を通り過ぎた。

(そのまま去れ、去れ! 悪霊退散……!)

 強く念じ、本棚の影で息をひそめる。足音が止み、ふいに図書館に静寂が戻った。

「ここにいたのか、ハナコ」
「し、シュン王子っ」

 てのひらに明かりの魔法を灯した山田が、つかつかと歩み寄ってくる。奥は袋小路。とっさに厚めの本を引き抜いて、ぎゅっと胸に抱きしめた。

「駄目ではないか、こんな奥まった場所にひとりいて。不埒(ふらち)(やから)に襲われたりでもしたらどうする気だ?」
「おほほほ、王子こそ護衛もつけずに出歩くだなんて、とっても危のうございますわよ?」

 ひきつった笑顔を返す。てか、探してくれと頼んだ覚えはこれっぽちもない。

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