断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「案ずるな。この国でわたし以上に魔力を持つ者などいないからな」

 追い詰められて、壁ドンされる。明かりの魔法が目に刺さり、思わず本で顔を隠した。

 いざとなったらこの角で山田の頭をカチ割るしかない。どうせやるのなら、容赦(ようしゃ)なく全振りする心づもりだ。

「照れているのか? ふっ、可愛いやつだ」

(お前の瓶底(びんぞこ)眼鏡に光が反射して、ただ単にまぶしいんだよ!)

 出かかった言葉をなんとか飲み込んだ。山田が王子でなければ、あのときみたいにこっぴどく振ってしまえるのに。

「王子、少々光量が……」
「ああ、すまない。ハナコの美しい顔をよく見たくてな」

 すかさず(あご)クイされる。

「それに王子ではない。シュンと名で呼ぶようにと言っただろう?」

 キメ顔で言われても、トキメキのトの字もなかった。王子だろうと山田は山田。しょせんサエナイ瓶底眼鏡だ。

「シュン様、わたくしそろそろ行かないと。迎えの馬車が来ておりますので」
「もう少しくらい良いではないか」
「駄目ですわ。父に時間厳守と厳しく言われておりますもの」

 顔をそらしてどうにか顎が山田の手から逃れた。

 あとは横につかれたこの腕の下をくぐり抜ければ、華麗に脱出成功だ。名付けて必殺・壁ドン破り、となるはずだったのに。

 山田はムダに長い足を本棚にかけて、すり抜けをブロックしてきやがった。
 土足で本棚に乗り上げるとは、本好きとしては許しがたい。

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