断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「せめてお顔をこちらに向けていただけませんか? その、わたくしとくっつき合っていた方が、シュン様も少しは温かいかと思って……」

 山田なら、よろこんで飛びついてくると思ったんだけど。
 それなのに山田はぴくりとも動こうとしなくって。

「シュン様……?」
「すまない、ハナコ。それだけは絶対に駄目だ」
「どうしてですの?」

 普段はうっとうしいほどグイグイ来るくせに。

「こんな誰もいない場所でもう一度ハナコを抱きしめてしまったら……これ以上自分を押さえる自信がないのだ」
「そ、そんなっ」

 なんか声が上ずっちゃった。
 ほっぺたも熱い気がするし、なにコレ心臓までバクバクいってるっ。

(うそ、よりにもよって山田がカッコよく見えるなんて……!)

 動揺が伝わったのか、背中を向けたままの山田がフっと笑った。

「安心してくれ。このシュン・ヤーマダの名にかけて誓おう。大事なハナコを傷つけるような真似だけは絶対にしないと」
「シュン様……」

 思わずポウっとなってると、薄暗い中、山田が振り返るのが分かった。

「だがハナコのその願い、いつかは必ず叶えてやろう」

 ぎゃっ、キメ顔の山田、瓶底眼鏡が雪まみれな上に鼻水がツララってるしっ。

(数秒の恋が一瞬で冷めたわっ)

 ふぃー、危ない危ない。生存危機にさらされたドキドキ感を、あやうく恋ゴコロと勘違いするとこだったよ。

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