断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「抽選に当たったお嬢さんは運がいいようですな」
「ハナコ・モッリですわ、先生。わたくしは招待されて観に来た口ですので」
「なんと、お嬢さんがかの有名なハナコ嬢でしたか。だとすればもっと前の席で見てはいかがかな? その方が招待(ぬし)もよろこぶじゃろうて」

 有名って、一体どんなふうに?
 まぁ、聞かなくってもだいたい予想はつくけどさ。ヨボじいの口ぶりだと、招待したのは山田だって気づいてそうだし。

「いえ、わたくしはここで十分ですわ。もう始まりそうですし、あまり目立ちたくはありませんの」
「かっかっか、それでは仕方がありませんな」

 王子も前途多難じゃのう、なんてつぶやきが聞こえてきたけど。前途多難なのはこっちだっつーの。
 学園でも外堀埋められてきてるみたいでオソロシすぎる。
 今日もみんなの前で山田にロックオンされたら面倒だし。終わったら見つかる前にソッコーで帰ろうっと。感想は後日ケンタ通じて伝えるってことで。

 開始のブザーが鳴って、照明が落とされた。ゆっくりと舞台の幕が開いていく。
 よかった、何事もなく始まって! これで代役なんて悪夢が起こることもなくなった。
 あとはキスイベントを見守るだけだし、もう楽勝って感じだよね。せっかくだから気楽に劇をたのしんじゃおうっと。

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