断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

第38話 怪しい雲行き

 しばらくは何事もなく学園生活が続いて。
 山田の視線を感じることはあっても、直接話したりすることは一度もなかった。

 今日も平和に授業が終わって、今は未希と一緒に貸し出しサロンでおしゃべりしてるところ。

 くしゃみが出そうになってすっと指を伸ばした。人差し指の爪先に意識を集中させる。
 魔力がたまったベストタイミングで、遠くに置かれたティッシュをシュっと一枚引き寄せた。

 見て、この洗練された無駄のない動き。
 ティッシュ引き抜き大会があったら、結構上位を狙えるんじゃない?

「そういや華子、魔法実技の次の試験、何にするかもう決めた?」
「わたしにティッシュ引き寄せる以外に選択肢があると思ってるの?」
「芸がないわね。少しは進歩したとこ見せないと、下手したら単位落として留年ってこともあり得るわよ?」

 魔法学の先生、ちょっと厳しいんだよね。フランク学園自体、公爵家の権威とか使うの校則違反だし。
 うう、留年だけは絶対にイヤだっ。イケメン探しが遠のいちゃうっ。

「引き寄せられるなら、魔法でゴミ箱にも入れられるんじゃない?」
「引っ張るんじゃなくて投げるのか……ちょっとやってみる」

 丸めたティッシュを手に乗せて、集中して魔力をこめる。手のひらから飛び出すと、放物線を描いてティッシュはポトンと床へと落ちた。

「おお、動かせた」
「まずは飛距離を伸ばす必要がありそうね」

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