断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

第66話 後には引けなくて

 すぐにやってきた冬休み。
 ここ数日はメイドたちが旅行の準備してるのを、ソファに座ってぼんやり眺めてる。
 なんだかたのしそうだな。きゃいきゃい荷造りしてて、まるで自分が行くみたいにはしゃいでるし。

 わたしの留学の話は、王家主導で怖いくらいトントン拍子に進んでる。
 で、その前に冬休みを利用して、一度リュシアン様とイタリーノ観光に行くことになったんだ。
 これまでの努力の結果だし、わたしも大よろこびしてるとこ。

(本当なら……なんだけど)

 はぁ、とため息をつくと、そばにいたメイドがびくっと体をすくませた。

「すみませんっ、うるさかったですよね! いますぐに片づけますのでっ」
「ああ、いいのよゆっくりで。むしろわたくしがここにいたらみんなの邪魔ね」
「お、お嬢様が邪魔だなんて、とんでもございません!」

 最近のわたしの言動にメイドたちも戸惑ってるみたい。
 以前のハナコなら、いちいち使用人に声かけることもなかったからね。仕方ないっちゃあ仕方ないんだけど。

「あなたたち、手を止めないで作業を進めなさい!」

 メイド長がてきぱきと指示を出してくる。
 入れ替わりの激しいメイドの中でも、彼女はいちばんの古株で。ずっと身の回りの世話してもらってるけど、そういや名前も知らないや。

< 349 / 413 >

この作品をシェア

pagetop