断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

王子の苦難

 ピコン。

 城にある自室のデスクで、オーブが白く発光する。
 中に映し出されているのは、学園の門をくぐるモッリ公爵家の馬車だ。

 書きかけのレポートを放り出し、わたしは一瞬で昇降口に移動した。
 あえて離れた場所に転移したのは、偶然を装うためだ。
 ハナコばかりを特別扱いすると、理事長であるおじい様があまりいい顔をなさらない。

「ハナコ、おはよう」
「おはようございます、シュン様。今日もお早いですのね」
「うむ、今日は入学式があるからな。つい、いつもの癖で来てしまった」
「ほほほ、さすがはシュン様ですわ。生徒会長の座をケンタに譲っても、引継ぎで責任を感じていらっしゃるのね」
「まぁ、王子としての性分だな」

 と言いつつも、早く来たのはもちろんハナコの顔を見るためだ。
 春休み中に城で幾度か会うことができたが、それでも日常でハナコが足りなさすぎる。

「それにしても今日からまた一年、学園で楽しく過ごせますのね。いい機会ですから、わたくし魔法学を基礎から学び直そうかと思っておりますの」

 うっ、なんたるまばゆい笑顔。
 ハナコが可愛すぎて、危うく鼻血が出そうになったではないか。

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