断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 わたくしはハナコでありながら、このあと華子の人生を生き続けた。
 “山田”であるシュン様と、悲喜こもごもを味わいながら。

「華子さん……華子さん、お願い、俺を置いてかないで……」

 殺風景な病院の一室で、無機質な電子音がリズムを刻んでる。
 点滴の管がつながったわたくしの手を握りしめて、ベッドの脇に座るシュン様が、あの日のように眼鏡の下から透明なしずくをあふれさせていた。

「わたし、先に逝くけれど……」
「いやだ、華子さん、俺を置いて逝かないで」

 わたくしもシュン様も、とてもしわしわになってしまったわ。
 こんなに長い時を過ごしても、まだ一緒にいたいと思うだなんて。

「この不思議な世界に来て、あなたと会えて……わたし本当にしあわせだった……」
「そんなこと言わないで。これからもっともっとしあわせにするから」

 いやいやと頭を振ったシュン様が、握る手にぎゅっと力を込めた。

「だったら」

 空いた手で濡れる頬に手を伸ばす。
 ああ、なんて愛おしい方。
 ハナコはいつまでもシュン様のものですわ。

「生まれ変わってもわたしを見つけて。わたし、あなたを待ってるから……」

 ひとつ密やかな息をつく。
 次に目覚めるときも、きっとあなたはそこにいる。

 微笑んで、わたくしは重いまぶたをゆっくり閉じた――。







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