クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
「急すぎたか? なにか用事が」
「いえっ、特になにも……」

 予定もなく出歩くといい顔をされないので、休日は基本的に離れにこもっていた。やることといえば、読書か、離れの小さな庭の手入れくらいだ。

「なら、明日」

 天城さんにそう言われ、驚きすぎて小さく頷いてしまった。もっとも、性急なのは単純に私たちがだきるだけ早く結婚する必要があるからだろう。

 その後披露宴を開く横浜と横須賀のいくつかのホテルの候補を挙げてもらい、どこかほわほわした気分のまま渡されたパンフレットを眺める。

 信じられないのだ。
 意に染まぬ、避けられない政略結婚の相手のためにわざわざ式場を見に行く?

 私の横で、天城さんは真剣な面持ちでパンフレットを見つめている。適当にコンシェルジュさんに任せてしまえばいいのに、真剣に私の意思を尊重して決めていこうとしてくれている。

 やっぱり天城さんは優しい人なんだ。

 そう確信したとき、コンシェルジュさんのスマホが震える。画面を確認した彼女は「葉山の見学の予約、とれております」と微笑んだ。



 デパートを出ると、すっかり夕方になっていた。少しだけ肌寒い。

「送る」

 天城さんがちらっと私を見て言う。つまり今日は解散ということだろう。

「いえ、電車で……」
「今の時間帯は混むからだめだ」

 断定的に言われ、おずおずと頷くと私を見て天城さんは少し思案する。スマホを取り出し、どこかにメッセージを送ったようだった。

「君の自宅近くの公園まで高尾が来るそうだ」

 私は微かに首を傾げる。雄也さんが迎えにきてくれる?
 公園……というと、野球もできるようなグラウンドがある大きな公園のことだろう。家までは目と鼻の距離だ。

「そこまで送ってくださるなら、歩いて……」
「だめだ。もう暗い」

 目をしばたく。どうやら心配してくれているらしいとわかって、その優しさに素直に甘えることにした。

 天城さんの車は、近くのホテルの地下駐車に停めてあった。コインパーキングも兼ねているらしい。
 天城さんの車は、海外のSUV車だった。おそるおそる革張りのシートになっている助手席に座った。目新しくてキョロキョロとしてしまう。

「どうした?」

 運転席に座った天城さんに言われ、慌てて「すみません」と目線を下げる。あまりに子どもじみた行動だっただろう。

「あの、助手席に座るって、生まれて初めてなので、つい」
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