クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 ふたりが向かい合っているテーブルに向かって声をかける。重厚な飴色の木製の机には、オムレツに数種類のパン、ヨーグルトやフレッシュジュースが並んでいる。
 当然、私の分はない。

「おはよう」

 挨拶が返ってきたのは、オムレツを食べていた雄也さんからだけだった。父はこちらを見もしない。けれど、見もしないまま「海雪」と私を呼んだ。

「はい」
「天城の三男とは順調なんだな」
「親切にしていただいております」

 そう答えた背後で、ぎいっと背後で扉が開く。振り向くと、愛菜さんが青い顔で立っていた。二日酔いみたいだ。

「あはは、お父様」

 愛菜さんはまだ少しお酒が残った口調で続ける。

「この人はね、実の母親に似てすっごくふしだらに決まってます。清純そうな顔をしていますけど、本性は性根の腐った泥棒猫ですよ? 男ひとり誑かすのなんか、朝飯前に違いないです。心配せずとも、天城会グループとうちの提携は強固ですわ」

 そう言って、テーブルの上にあった雄也さんのフレッシュオレンジジュースを一気飲みして、そして私の肩をトンと押す。

「しっかりと天城の三男に媚びて気に入られるのよ。汚い生まれのアンタにできるのは、それくらいのものなんだから」

 思わず身体を硬直させた私を見て愛菜さんは楽しげに笑い、そのままフラフラと食堂から出て行った。

「ま、愛菜! 海雪に謝れ……!」

 はっとしたように立ち上がる雄也さんに、私は苦笑して見せる。

「大丈夫です」
「……さっきみたいなことは、よく言われているの?」
「そう……です、ね」

 軽く俯く。悲しそうにする雄也さんの向かいで、父は泰然としてコーヒーを飲んでいた。我関せずと顔に書いてある。

 内心でため息をつき、頭を下げて離れに戻る。


 トーストを焼き、冷凍しておいたスープを温める。台所の小さなテーブルにそれらを並べ、手を合わせて「いただきます」としっかり口にした。

 食べ終わって、時計とにらめっこしながら出かける準備をした。

「それにしても……天城さんとお出かけすることになるとは想定してなかったな……」
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