クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
と、ふと、昨日は速足だった彼が意識してゆっくり歩いてくれていることに気が付いた。その優しさに心臓がぎゅうっとしてしまって、必死で冷静になろうと努力する。
「……ここは、俺がしばらく住んでいた場所なんだ」
ぽつり、と天城さんが懐かしむように口にした。
「そうなんですか? いつまで葉山に?」
自然とふたり、歩みを止める。遠くで鳥が啼き、ちゃぷんと波の音が響く。ざあ、と風が松葉を揺らす。
「葉山……というか、このホテルだな。中学のとき実家がごたついて、半年ほどこのホテルで暮らした」
思わず目を丸くする。寂しくなかっただろうか。過去のことなのに妙に心配になった私に、天城さんは微かに頬を緩めた。
「悪くなかった。実家はいつもギスギスしていたし、常にプレッシャーがかけられていて……だから、実家から解放されて、ここから眺める海原が、好きだった」
そう言ってから軽く呼吸を整え、天城さんは続ける。
「君を連れてきたかったんだ」
「……え」
目を丸くした私に、天城さんはジャケットのポケットから取り出した小さな小箱を渡す。勢いに押されるように受け取って、開いてみれば指輪だった。
きらきらしいダイヤが、春の陽射しに煌めいた。
「結婚してください」
ものすごく平坦な声で言われて、いまいち現状が理解できない。小首をかしげてしまった私の左手を取り、天城さんは薬指にその指輪を嵌めた。
驚きすぎて返事さえできなかった私に背を向け、天城さんはまた歩き出す。
広くてまっすぐな、夫になる人の背中。
なぜだか湧いてきた、抱き着きたくなる衝動を押さえつけ、彼の横に並んだ。
その後またしばらく歩き、空腹を感じ始めたあたりでホテルに戻る。ガラス戸の前に、敷島さんが待っていた。もしかしたら、中学時代ここに滞在していたとき、この敷島さんが天城さんのお世話係みたいなことをしていたんじゃないかなと思う。
敷島さんに案内されたのは、一階にあるレストラン、そのテラス席だった。相模湾が一望できるその席に座ると、さらりと春風が頬を撫でていった。ウエイターさんがテーブルにメニューとミネラルウォーターが入ったグラスを置いていってくれる。
「おすすめはありますか?」
「そうだな。海老はいけるか」
「はい、海鮮好きです」
「……ここは、俺がしばらく住んでいた場所なんだ」
ぽつり、と天城さんが懐かしむように口にした。
「そうなんですか? いつまで葉山に?」
自然とふたり、歩みを止める。遠くで鳥が啼き、ちゃぷんと波の音が響く。ざあ、と風が松葉を揺らす。
「葉山……というか、このホテルだな。中学のとき実家がごたついて、半年ほどこのホテルで暮らした」
思わず目を丸くする。寂しくなかっただろうか。過去のことなのに妙に心配になった私に、天城さんは微かに頬を緩めた。
「悪くなかった。実家はいつもギスギスしていたし、常にプレッシャーがかけられていて……だから、実家から解放されて、ここから眺める海原が、好きだった」
そう言ってから軽く呼吸を整え、天城さんは続ける。
「君を連れてきたかったんだ」
「……え」
目を丸くした私に、天城さんはジャケットのポケットから取り出した小さな小箱を渡す。勢いに押されるように受け取って、開いてみれば指輪だった。
きらきらしいダイヤが、春の陽射しに煌めいた。
「結婚してください」
ものすごく平坦な声で言われて、いまいち現状が理解できない。小首をかしげてしまった私の左手を取り、天城さんは薬指にその指輪を嵌めた。
驚きすぎて返事さえできなかった私に背を向け、天城さんはまた歩き出す。
広くてまっすぐな、夫になる人の背中。
なぜだか湧いてきた、抱き着きたくなる衝動を押さえつけ、彼の横に並んだ。
その後またしばらく歩き、空腹を感じ始めたあたりでホテルに戻る。ガラス戸の前に、敷島さんが待っていた。もしかしたら、中学時代ここに滞在していたとき、この敷島さんが天城さんのお世話係みたいなことをしていたんじゃないかなと思う。
敷島さんに案内されたのは、一階にあるレストラン、そのテラス席だった。相模湾が一望できるその席に座ると、さらりと春風が頬を撫でていった。ウエイターさんがテーブルにメニューとミネラルウォーターが入ったグラスを置いていってくれる。
「おすすめはありますか?」
「そうだな。海老はいけるか」
「はい、海鮮好きです」