クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 ところでたった一ヶ月で挙式をしたのは、天城さんが……柊梧さんが一日でも早い結婚を希望したからだ。
 やはり一日でも早く解放されたかったのだろう。

 披露宴は、彼の仕事の関係で三か月先を予定している。
 彼のご両親とは、一度だけホテルで会食の席を設けてもらった。

 雄也さんに聞いた話だと、これで彼は実家からやることなすことに口を出されることがなくなるのだそうだ。彼は自分の実家に辟易としていたようだったから、良かったと思う。

「荷物は昨日届いたぶんで全部か?」

 式のあと、式場のかたにいただいた百合の花束を胸に柊梧さんの車に乗り込むと、そう聞かれて頷いた。あたりはすっかり夜になっていた。

「そうです。昨日は荷物の整理手伝っていただいてありがとうございました」

 柊梧さんは「いや」と小さく呟くように言う。私はそんな彼の横顔を見ながら、ふと先ほど触れた唇の温かさを思い出し頬が熱くなる。きっと真っ赤だ……!
 ごまかすように窓の外を見る。暗い初夏の空に星がいくつか浮かんでいた。
 私はそれを見つめながら、ぼんやりと昨日のことを思い返す。

◇◇◇

 昨日。
 
 自分の荷物を柊梧さんとの新居となる横須賀市内のマンションに運び込んだ。彼が勤務する海上自衛隊の基地にほど近い、少し高台にある新築の低層マンションだった。その最上階の角部屋だ。

 びっくりするほどセキュリティがしっかりしているそのマンションは、2LDKの日当たりのいい、海……横須賀港の見えるマンションだった。両面バルコニーのため、風が通り抜けていくのが気持ちいい。初夏の日差しの中、薫風を窓辺で楽しむ。

 私は私物があまりなかったから、宅配業者さんに頼んで数個のダンボールを運んでもらった。家具家電は柊梧さんが元から使っていたものがあるとのことで、甘えることにしたのだ。

 あらかた荷物が片付いて、ふうと息を吐いたとき、広いリビングで柊梧さんがふと私を呼んだ。

『海雪』

 目を瞬く。初めて名前をちゃんと呼ばれた。びっくりして返事もろくにできていない私に、柊梧さんは微かに声を掠れさせて言う。

『気に入ったか?』
『え?』

 きょとんと聞き返した私に、彼は続けた。

『この家』

 端的に言われ、慌てて頷く。

『はい! もちろん。景色もいいし使い勝手もよさそうですし。すてきな新居を探してくださって、ありがとうございます』
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