クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 雄也さんにもう一度お礼を言って母屋を出て向かった離れには、大井さんと、彼女の息子で私と同じ年の幼なじみ、毅くんが待っていてくれた。唯一の友人と呼んでいい人だった。

『結婚おめでとう、海雪ちゃん』

 大井さんに包みを渡される。開いてみると。上品な漆塗りの夫婦橋だった。

『仲良くやるのよ。聞いている限り、旦那さんは海雪ちゃんにべたぼれだから、大丈夫だと思うけど』

 大井さんの言葉に苦笑する。優しくしてもらっているとはいえ、べたぼれはない。
 そう言おうとした私の眼前に、「ん」ともうひとつ包みが差し出される。毅くんだ。

『これなあに……わ、箸置きだ』
『ちゃんとした結婚祝いは披露宴のときに改めて。……幸せになれよ。海雪』

 毅くんにも祝われて、私はちょっと涙ぐみながらお礼を言った。
 そうして大井親子が帰って静まり返った離れで、ひとり眠る。

 明日から私には家族ができるんだって、ひとりで眠らないでいいんだって、そう思いながら目を閉じた。

◇◇◇

 そんなことを思い返している間に、いつのまにか眠っていたらしい。横須賀のマンションの地下駐車場で目が覚めた。

「わー……すみません、また寝ていました」
「疲れたんだろう」

 あっさりと彼は言って、私から花束を受け取り車を降りた。どうやら持ってもらえるらしい。彼に続いてエレベーターに向かう。

 百合のかおりがエレベーターに充満する。甘くて、どこかくらくらするにおい。

 最上階について、内廊下を彼と並んで歩く。部屋の鍵は暗証番号タイプのスマートキーだ。

 部屋に入る。電気を点けて、それから所在なくあたりをみまわす。さて、どうしたらいいんだろう? 柊梧さんは百合を抱えたままリビングを出て、戻ったときには持っていなかった。

「寝室に飾らせてもらったが、いいか」
「あ、はい……」

 答えながら「寝室」という言葉を妙に意識してしまって、慌てて雑念を払う。と同時に大事なことを思い出した。

「あ、晩御飯……」

 いまさらのように呟くと、柊梧さんが「用意してある」とさらりと言った。
 あっというまに冷蔵庫からダイニングテーブルに並べられていくのは、彼が午前中のうちに用意してくれていたらしいディナーだった。

「え、わあ、すごい……」
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