クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 そう答えると、海雪がびっくりした顔をした。それが不思議で軽く眉を上げると、海雪が慌てたように「す、すみません」と肩を落とした。

 違う。
 違うんだ気分を害したとかそんなんじゃない!
 俺は慌ててできるだけ柔らかな声で言う。

「いや、なにを驚いているのか不思議に思っただけだ」

 海雪は目を瞬き、それからふわりを微笑む。

「ごめんなさい。単に、柊梧さんは海外慣れしてるから……ハワイだって何回も来たことがあるのかと思っていたんです」
「そうか」

 ひとこと答えてから、ぐっと腹に力を籠める。これで毎回会話が終わるから、不愛想でつっけんどんな奴だと思われているに違いない。会話、そう会話を続けなければ……!

「プライベートでは初めてだ」

 結局事実を付け足すだけで終わったが、海雪はにこやかに会話を拾ってくれる。

「そうなんですか?」
「訓練で来たことはある」
「そうでしたか。お仕事で……」

 海雪はうん、と頷いた。その手元のエビを半分引き受け、背ワタ取りを手伝う。

「わ、上手……! さすが、お料理が趣味だから? それともお医者様だからでしょうか」

 にこにことそんな風に褒められて、俺は内心鼻高々だった。海雪が褒めてくれるのなら、エビの背ワタなんて何万匹ぶんでもとってやる。
 それからエビをニンニクとトマトで炒めた。これにアボカドと香味野菜を和えてサラダにする。

 別荘に備え付けのやけに昭和レトロな炊飯器から、海雪が白米をよそってくれる。古いというわけではなく、ハワイではこのタイプが主流なのだ。
 それに焼いておいたハンバーグと目玉焼きでロコモコ丼にする。これで完成だ。

 料理を庭のウッドデッキに置かれたテーブルに運ぶ。それからワイン。
 夕日は水平線の向こうに沈み、微かに空を橙色に滲ませているだけだ。夜と夕方のちょうどあわいの時間帯。
 さあっと風がふいた。日中は十分過ぎるほど暑いこの島だけれど、この時刻になると少し冷える。室内のソファに置いてあったストールをとって海雪の肩にかける。慌てたように礼を言う海雪に軽く首を振ってみせた。
 ふたり並んでガーデンチェアに座り、料理を前に無言で海を眺める。

 橙に紺、紫が複雑に入り混じる空に、海雪が見惚れ、ほうっと小さく息を吐いた。

「こんなふうに夕日を見るのは、生まれて初めてかもしれません」
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