クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 信じられないほど満たされていて。

 こんなふうに日々が続いていくのだと、私は思い込んで過ごしていた。




 妊娠六か月に入ったあたりから、すこしずつ出産準備を始めよう、ということになり一緒にベビーベッドを選び、名づけの本を買ってソファで並んで眺めてみたりした。

 柊梧さんと過ごしていると、ふわふわした幸福感と一緒に、自分でも驚くほど心臓がドキドキしてしまう。きっと彼と過ごすことが、嬉しくてしかたないのだろうな。

「もうすぐバレンタイン、か」

 柊梧さんをお仕事に送り出したあと、カレンダーを見ながらつぶやいた。バレンタインなんて、いままで無縁の生活だった。就職してから、雄也さんと毅くん、大井さんにちょっとしたプレゼントを渡すくらいで。

 チョコレートは、柊梧さんはあんまりかも。甘いものはそんなにって感じだし、それなら甘さ控えめのシフォンケーキなんてどうだろう。
 喜んでくれるかな。
 笑顔の柊梧さんを思い浮かべると、自然と鼓動が跳ねてしまう。

「いろいろと考えてみようかな」

 そうひとりごちながら窓の外に目をやる。ガラスの向こうは二月の曇天で、少し気圧も下がっているようだった。
 雨か、横須賀ではめったに降らないけれど雪でも降り出しそうな気配だ。

「それにしても、お年始の挨拶、よかったのかなあ」

 ぽつりとつぶやき、棚に飾ってある写真を視界に入れる。
 柊梧さんは意外と写真なんかを飾るのが好きなのか、結婚式や新婚旅行の写真、それに動物園でもらったぬいぐるみまで鎮座していた。その横つい先月、お正月に一緒に撮った初詣の写真なんかが飾ってある。お年始はさすがに天城家やいちおうは私の実家である高尾家にご挨拶にいくべきかと思っていたのだけれど、柊梧さんが『正月くらいゆっくり過ごそう』と言ってくれて、結局そうなったのだった。

 ふたりきりで過ごす年末年始は、思った以上に楽しかった。
 柊梧さんとお雑煮を作り、初詣をし、ゆっくりと過ごした。

 ……と、そんな思い出にひたっていると、インターフォンが鳴る。
 なにか荷物でも頼んでいたかな?
 そう思いながら受信機の画面を見て、思わず身体を強張らせた。

「……お義母さん」

 通話ボタンの上で指がさまよう。なんの用事だろう。妊娠したことは伝えていないけれど……雄也さん経由で知って、なにか言いに来たのかもしれない。
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