クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 お義母さんの背後には愛菜さんも見えた。
 迷っていてもしかたない。ふたりを追い返すわけにもいかないのだし。

「はい」

 インターフォンに出ると、高圧的に家に上げるように指示される。いきなり訪ねてこられた意図が全くわからず、緊張しながらもマンションのエントランスを開錠し、ふたりを招き入れた。

「へえ、悪くないわね」

 部屋に上がるなり、愛菜さんはうろうろと部屋を歩き回る。

「なにこれー。写真? わざわざ飾って、はしゃいじゃってバカみたい。ていうかなにこの派手なアロハシャツ。ハワイでアロハって、ベタすぎ。どうせあんたが強要したんでしょ。イケメンと結婚したからって調子のりすぎ。柊梧さんも嫌だったでしょうに、政略結婚だから気を使ってくれているのね」
「あの……?」

 混乱している私をよそに、お義母さんと愛菜さんは勝手に家の中を物色し始めて目を丸くした。

「あの、その、お義母さん、愛菜さん。申し訳ないんですけれど、柊梧さんの荷物もあるので……」

 遠回しに「触らないでほしい」と伝えてみたところ、愛菜さんがきょとんとして首を傾げた。

「え、なんで? あたし住むのに」
「え?」

 ぽかんと首を傾げた。愛菜さんは目を細めくすくす笑いながらソファに座る。

「交代しようと思って」
「なにを……ですか?」
「だから、柊梧さんのお嫁さん」

 私は声も出せずに立ち尽くす。……え?
 ぼうぜんとしている私に、お義母さんが呆れたように口を開く。

「あなたたち、政略結婚でしょう? 別に愛菜と交代したって別にいいじゃない。愛菜がね、柊梧さんのことを気に入って……すぐにあなたを離婚させるのも世間体が悪いから、とりあえず半年待っていたの」

 私は……私は、生まれて初めて、お義母さんにゆるゆると首を振って拒否を示す。だって、赤ちゃんはどうするの。

 ううん違う、私、柊梧さんの家族でいたい。
 初めての温かさをくれた、唯一の人。

「いや、です。いや」

 私の初めての抵抗。それがお義母さんにとって意外だったようで、呆れたように眉を寄せた。

「海雪。あなた、あたしたちに立てつける立場なの」
「で……でもっ」

 いやだ、いやだ、とお腹の中でぐるぐると感情が渦巻いた。
 柊梧さんから離れたくない。柊梧さんのそばにいたい。

「そうよそうよ。泥棒猫の、ふしだらな、薄汚い娘のくせに」
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