クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 ぐっ、と彼の腕の力が強くなり、私の胸の中がじわじわと安心で満たされた。泣きそうなほど、苦しくてしかたないほど、うれしい。

「唯一だなんて。あなたたちは政略結婚でしょう?」

 お義母さんはそう言って続けた。

「その子の代わりに、本妻であるあたしの娘をやると言っているのよ。なんの不満があるの」
「政略結婚?」

 柊梧さんは皮肉げに笑うと、「もうとっくに」と言い放つ。

「結婚してすぐに、俺は実家と縁を切っている。政略結婚したいのなら、俺の兄にでも当たってくれ」

「え?」

 きょとんとするお義母さんだったけれど、不思議なのは私もだった。

 縁を切る……、って。

 でもすぐに理由を思いついた。そうだ、この結婚は彼にとって実家から自由になるためのもの。縁切りまでふるとは思っていなかったけれど、きっと最初からその予定だったのだろう。

 ひとり納得している私の頭の上で、きっぱりとした声が響く。

「いますぐに出ていけ」

 目線で玄関を示し、彼はお義母さんたちに言う。なおも「でも」と言いかけた愛菜さんに、柊梧さんは眉を吊り上げた。

「警察を呼ばれる前に出ていけと言っているんだ!」

 びくりとお義母さんと愛菜さんは顔を見合わせ、それからチラッと私を睨みつけてふたりは出て行く。
 リビングのドアをくぐりながら、愛菜さんは私にふりむきざまに「やっぱり」と笑う。

「やっぱりあんた、男をたらしこむ才能はあるみたいね」
「貴様」

 先に反応したのは柊梧さんだった。愛菜さんはフッと唇を上げる。

「柊梧さん。あのですねえ、その女がふしだらなビッチだって、男とみればすぐにでも色目を使うような女なんだって、すぐにわかりますよ。本性を知ってから後悔するのはあなたなんだから」

 柊梧さんの拳が壁を叩く。愛菜さんはさすがに目をむいて、慌てて部屋を出て行った。
 玄関のドアが閉まる音がして、へなへなと膝から力が抜ける。

「海雪っ」

 柊梧さんが血相を変えて私を抱き上げ、ソファに座らせる。

「大丈夫か? くそ、すまん……酷い目に遭わせてしまった」

 自らもソファに座り、柊梧さんは私をまた抱きしめる。頬を頭に寄せ、なんどもキスを降らせてくれる。

「海雪、海雪……愛してる、なにも心配するな」
「柊梧さん、一体……なにが」

 混乱しながら彼を見上げると、彼は眉を寄せつつゆっくりと私の背中を撫でる。
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