クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
「さっきはああ言ってしまったけれど、君が悪いわけじゃない……と、思う」
高尾を外まで見送りに出ると、迎えに来た大井毅の運転する車の前で小さく俯いた。
「とにかく海雪は……なんというか、学業や社会面では家庭教師がつき厳しく育てられたせいもあってかなり優等生だ。けれど、なんというか、情緒面は……未発達なんだと思う。ちゃんとした人間関係をほとんど育まずに育ったんだ。ふつうなら、君の態度を見ていて、接されて、慈しまれて、女性として愛されてはいないなんて思わないと思うから」
俺は小さく首を振る。
「ちゃんと説明を尽くしていなかった俺の怠慢だ」
そう言った俺に、高尾は「それから」と寂しげに笑う。
「海雪がずっと欲しかったのは、家族だったんだ。家族からの愛。だから、天城からいろんな形で与えられた愛の、その家族愛をいちばんに感じて、それで満足してしまった部分もあると思う」
「もっとわがままでいいのに」
ぽつりとつぶやく俺に、高尾は続けた。
「僕はずっと、母さんたちの機嫌をうかがっていたから、その範囲内でしか海雪に兄らしいことを……家族らしいことをできなかった」
悔やむ高尾にそっと頬を上げてみせる。
「これから……これからそうなればいいんじゃないか。‘’お兄ちゃん‘’」
高尾は失礼なことに微かに嫌そうな顔をしたあと笑った。
「……まあ、海雪が自分の感情に気が付くのも、時間の問題だとは思うけれど」
自分の感情?
微かに首を傾げる俺に肩をすくめ、高尾は車に乗り込む。
「母さんたちのことは、今後は僕に一任してほしい。今日のことで、いくらなんでも腹が決まった。もう二度と海雪には接触させない」
「そうか」
目だけで頷いた。それが高尾の決意なら、尊重するべきだ。
「母さんたちの借金の調査とか、君が裏から手を回してくれたんだろ。ありがとう」
「いや、構わない。海雪のためだったし。看護師も捕まったんだろ」
高尾はこくりと頷く。
それにしても、まさか海雪の主治医からの話を真剣に聞いていたことが、高尾夫人を勘違いさせることにつながるとは思ってもいなかった。
海雪の情報を売り渡した看護師は、たまたまだが高尾夫人と愛菜の通うホストクラブの常連客だった。飲んでいるうちに親しくなり、海雪のことをあの親子にベラベラと喋ってしまっていたらしい。