クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 俺が海雪と診察にきて、あまりに真剣に話を聞いていたものだから――。

『きっと、天城さんって、専門外のことはなにも知らないんじゃないですか?』

 そんな看護師の言葉を鵜呑みにし、高尾夫人は俺が医者の癖に妊娠週数のことすら知らないと高をくくってあんな杜撰な計画を立てたらしかった。

 おそらくは、天城家からせっつかれていたこともあるだろうけれど……。

 そんなふうに思い返していると、高尾がふと表情をさらに真剣なものに変えた。

「あらためて……海雪を幸せにしてくれてありがとう、天城」

 深々と頭を下げ、高尾は車に乗り込んだ。
 春の夜風が吹く。

 リビングに入ると、海雪が紅茶を淹れてくれていた。

「休んでいろと言ったのに」
「いえ、お掃除もなにもしていませんし……」

 にこにこと言う海雪を「話がある」とソファに座らせた。

「どうしたんですか?」

 首を傾げる彼女の横に腰をおろし、肩を引き寄せる。

「君がひとつ、勘違いしているようだったから」
「勘違い?」

 そうだ、と頷き間髪入れずその柔らかな唇にキスを落とす。

「ん……っ」

 舌を挿し入れ口内をしゃぶりつくす。驚いた様子で息を止めたあとに、すっかり俺とのキスに慣れている海雪は、すぐにとろんと身体から力を抜き俺に身を任せてくる。毎日毎日、執拗といえるほどに繰り返してきた口づけ。

 これが家族愛だけだなんて、よく思えたなあ、海雪。

 きっと、自分の価値に気が付けていないんだと思う。ずっとずっと、政略結婚の駒になる以外、自分は無価値なものとして扱われて育ってきたのだから。

「海雪」

 深くキスを繰り返しながら、その合間に愛おしい人の名前を呼ぶ。

「はい、柊梧さん」

 ほんの少しうわずった声で海雪が答える。俺は彼女の頬を両手でつつみ、頬を綻ばせありったけの愛情と慈しみを込めて言葉にした。

「愛してる」

 海雪は目を見張ったあと、ゆっくり微笑み「私も」と唇を動かした。その唇に再びキスを落とし、唇の皮膚一枚がうっすらと触れ合った状態のままに続ける。

「ひとりの女性として、愛してる」
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