噛んで、DESIRE

狡いのはきみのほう







「別にいいじゃん、ちょっとくらい騒ぎになったって」

「ぜんっぜん良くないですよ……」



いまは、帰ってきた吾妻くんにタックルするくらいの勢いで問い詰め、至近距離で尋問中。

まったく威力がないであろうわたしの睨みを真っ直ぐ受け止めている吾妻くんは、平然と右耳に付いているピアスをいじっている。


「大丈夫だって。同居してるって、絶対バレたりしないからさ」

「うっ……吾妻くんは危機感がなさすぎるんです」


「はは、確かに俺、危機感とか持ったことないかも」

「……」



わたしは怒ってるのに、彼はなんでもなさそうに首を傾げて見下ろしてくる。

至近距離で瞳に絡め取られ、なんだか吾妻くんに支配されている感覚に陥ってしまう。




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