噛んで、DESIRE
彼の瞳には、孤独と迷いが渦巻いていた。
吾妻くんは、思ったよりも過去にめっぽう弱いのかもしれない。
だけどいまは、この話題を振ったわたしの責任だから、こくりと小さくうなずいた。
その様子を見た吾妻くんは、困ったように眉を下げたあと、すぐに口を開いた。
「サキさんは吾妻家の、というか俺の、世話係」
「……世話係?」
「そ。でもサキさんは、もとの世話係の人が辞めてから、つまり俺が10歳のときから面倒を見てくれてる人」
「そうだったんですね……」
だいたいは憶測がついていたけれど、お世話係ということは、かなり身近な存在だったのだろう。
サキさんのことを語る吾妻くんは少しの慈愛が滲み出ていて、彼女を信頼しているのがよくわかった。