噛んで、DESIRE
柔らかい笑みを浮かべる吾妻くんは、わたしと似ているのかもしれない。
事情は違えど、少し重なっている部分がある。
吾妻くんをじっと見つめると、彼は儚さも相まって、美麗さが際立っていた。
人を魅了する容姿は、いつ見ても色褪せない。
彼はわたしを見つめ返して、淡々とした口調で話を続ける。
「俺、生まれたときからゴール決められてんの」
「……ゴール、ですか」
「うん。そのゴールは、旧大財閥・吾妻家の跡取り」
「……跡取り」
「重苦しい響きだよな。ひとり息子だから、俺を継がせるために父は必死なんだよ」
生まれたときから家に囚われているのは、わたしも同じだった。
逃げられない宿命から遠ざかるために、何が出来るかを考えるのが日課だった。