噛んで、DESIRE


否定は出来なかった。

というか、するべきじゃないと思った。


吾妻くんは、自分をきちんとわかっている。

それは彼の強さで、羨ましくもあった。


わたしはずっと、自分を模索し続けている。

何をしたいのか、どう生きたいのかわからない。


実家を出てから、自由になったはずなのに、どうしようもなく縛られている気がする。


「自由って、何なんだろうな」


ふと呟いた吾妻くんの言葉は、不安定にも宙に浮いた。

それがわかれば、少しは世界が変わるのだろうか。


……わからない。

まだ未熟で青臭いのは、わたしのほうなのかもしれない。


「吾妻くんは、……きっと大丈夫です」


そう見つめ返せば、吾妻くんは口角をキュッと上げた。

そして目にかかった前髪をかきあげて微笑んだ。



「でも俺いま、結構満たされてるよ」

「……どうしてですか」

「さあね? ナイショ」


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