噛んで、DESIRE
そこまで言って教えてくれないのは狡い。
でもなんとなくわかってしまうのだから、かなり吾妻くんとの距離は縮まったのかもしれない。
獣目に捕らわれ、恐ろしいほどの引力に引き付けられる。
そうして彼は顔を近づけてきたかと思うと、わたしの耳をかぷりと噛んだ。
熱くて溶けそうなのに、少しの痛みが冷静さを伴わせる。
まさにいまのわたしと吾妻くんの関係のようだった。
じっとわたしを伏し目で見つめたあと、彼はニコッと笑って言った。
「杏莉ちゃんはさあ、可愛いよ」
「……っ、なんです、か、いきなり」
……また不意打ちで心臓に悪いことを。
彼からの“ 可愛い ”は慣れないから、すぐに鼓動が激しくなる。
「ちょっと愛想ないとこも、噛んだら弱くなるとこも、結構いろいろ危ないくらい可愛い」
「え……、う、え」
「だから俺、杏莉ちゃんのそばにいれたらそれで充分かも」