噛んで、DESIRE
それに、吾妻くんの留年には理由があったことも知ったし、彼が自由に羽ばたけるようになればいいなと願っている。
出来ることなら、今年いっしょに卒業したい。
でもそれはわたしが決めることじゃないから、祈ることしか出来ないのだ。
「杏莉ちゃんはさ、もしメイド服着ろって言われたらどーすんの?」
悶々と考えていると、何の脈絡もなく吾妻くんがそんなことを尋ねてくる。
その表情は、自分で聞いてきたくせにかなり興味がなさそうだ。
にしても……、メイド服?
突然すぎて変換に遅れつつも、わけがわからぬまま返答した。
「……絶対強制!と言われたら着ますけど」
「へーえ? ふーん」
「何なんですか……」
どうせわたしには似合わないとか言いたいんだろう。
わかってるけど癪だ。
別にわたしだって例えばの話をしているんだから、そんなふうに気の抜けた返事をしないでほしい。