噛んで、DESIRE


「いや、今年は参加するつもり」


……良かった。

彼がいないと寂しいだなんて言えるはずもなく、ただバレないように胸を撫で下ろした。


吾妻くんだって、今年卒業すれば、もう高校の文化祭を経験することはない。

だからこそ思い出作りをわたしたちと一緒にしてほしいなと思っていたから、かなり安心。



「吾妻くんと文化祭……」

「なにニヤニヤしてんの」

「っ、してません!」


今日も今日とて異常なほど色気を撒き散らしている吾妻くんは、右手でピアスをいじっている。

もちろん長い脚は机に収まっておらず、安定に机の外へ投げ出されていた。


制服の第2ボタンまで開いたシャツと、機能していないんじゃないかと思うほど緩いネクタイ。


何度見ても同級生には見えない。

……実際、同い年ではないんだけれど。


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