《旧版》涙色の夢路(ゆめ)【壱】
 あたしの顔を覗き込んでいたのは、着物を身に(まと)った美少女だった。ノースリーブの水色の着物に、紅白の(きく)(とじ)が付いた赤い袴、腕には白い着物の袖がリボンで固定されている。

 この人は……誰!? これは夢!? 現実!?

 混乱する頭を押さえながら、ゆっくりと体を起こす。

「あ……あの……ッ」

 麗しい顔に薄化粧を施し、長い黒髪をあたしと同じポニーテールのようにした美少女は、優しく微笑んだ。

「怖がらないで、味方です。ところで、名は何と?」
「え、えっと……織田原萌華……といいます」

「萌華殿……良き名ですね」

 名前を名乗った時、彼女が一瞬だけ目を見張ったように見えたのは、気の所為(せい)だろうか?

 それに……萌華殿()

 というか、名前教えちゃって良かったの!? この人は、一体……?
< 5 / 25 >

この作品をシェア

pagetop