幼なじみの不器用な愛し方
あぁ……だめだ。

泣かないでいようって決めてたのにな。

谷瀬くんの姿が滲んでぼやけていくよ。


「おれ、すぐには諦められないと思います。未練なんかめちゃくちゃある」

「……うん」

「だから、美月先輩の好きな人に伝えてください。美月先輩を泣かせたりしたら、強引にでも奪いに行くって」


思いがけない言葉に目を見開いた。

涙が頬を伝ったのと同時に、谷瀬くんが少しだけ意地悪な表情をしていることに気が付く。


「おれが悔しくなるくらい、誰より幸せでいてくださいね」


谷瀬くんの言葉に、わたしは堤防が決壊したように泣いてしまった。


ありがとう。わたしも、谷瀬くんの幸せを何より祈ってるからね。

涙の隙間でそう言うのが精一杯で。

谷瀬くんは眉を下げて笑って、一瞬、ほんとうに一瞬だけ、切なそうに表情を歪めた。




「……教室に戻るの、怖すぎる」


ハンカチで目元を抑えながら言うと、1段先に階段を降りる谷瀬くんが小さく笑いながら振り返った。


「泣いちゃったのバレバレの目してますからね」

「だよねぇ……」
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