幼なじみの不器用な愛し方
わたしが言い切ると、谷瀬くんもそれ以上は何も言わなかった。


谷瀬くんと別れて、3年生のフロアを目指す。

すれ違う人の中には泣き腫らしたわたしの顔を見てぎょっとする人もいたけれど、案外気にならなかった。


階段を降り終えて踊り場に立ったとき、


「あ」


ちょうど階段を上ってきていた人物に気が付いた。

彼女もまたわたしに気付いたようで、丸い目が更に丸く開かれる。


「美月ちゃん?」


彼女がわたしの名前を声に乗せた瞬間、外に音が聞こえちゃうんじゃないかってくらい大きく心臓が跳ねた。


昨日から色んなことを考えた。

自分のこと、谷瀬くんのこと、有斗のこと。

それから──“上原”と呼ばれた人物のこと。


「メグちゃん……」


正直、今一番会いたくない人だった。

熱で寝込む有斗にその人物に追求することは出来なかったから、謎のままになっている人物。
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