幼なじみの不器用な愛し方
嘘には聞こえない。絶対に口にしたくないと奥歯を噛んだ言葉だったとしても。

それは、雑誌からドラマへと進出した有斗の矜持だ。


「そっか……。じゃあ、もしかすると遠慮することなかったのかなぁ」

「遠慮?」

「お祭りの時に話してみて楽しかったから、神崎くんともっと仲良くなりたかったんだ。……でも、美月ちゃんがいる手前、なんだか遠慮しちゃって」


無風の空間に、わずかな足音が響く。

2人の姿は見えないけれど、距離が近付いたのがわかる。

どっちの足跡だっていい。これは必要なことなんだ──と、必死に自分に言い聞かせた瞬間。


「か……神崎くん……!?」

「……やっぱりな」


上擦った高い声と、さっきとは打って変わって、背筋の凍るような冷たい声が聞こえた。

隣でも、菊池が息を呑んだ気配がする。


「“ガラル”の“ルビーローズルッソ”。当たりだろ?」

「……え?」


さっきまでは明朗だった口調に、ありありと困惑が浮かんだ。

有斗が並べた単語はわたしにとっては呪文にしか聞こえない。だけど、モデルとして流行やオシャレに触れている有斗にとってはそうじゃない。
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