幼なじみの不器用な愛し方
「どういたしまして。神崎から礼を言われる日が来るとはなぁ」

「ははっ、うるせーな。俺は前から素直だろ」

「よく言うよ」


2人が楽しそうに笑っているので、わたしもようやく息をつく。

有斗が大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろう。

2人の問題を1人で抱える必要はない。

いつだってわたしの手を引いてくれる有斗のことを、わたしは信じるだけだ。




「っていうか、事務所に入った理由がわたしって、どういうこと?」


駅で菊池と別れて帰宅し、有斗の部屋でまったりと過ごしていたときのこと。

ふと、つい数時間前に聞いた台詞を思い出して、わたしは質問を投げた。

雑誌をめくっていた有斗が、顔を顰めてベッドに腰掛けるわたしを見上げた。


「……そんなこと言ったっけ?」

「言ってたよ。なんで誤魔化そうとするの」


しらばっくれようったって無駄なんだから。

引き下がる気配のないわたしに、有斗は諦めたように深いため息をついてから、髪をぐしゃぐしゃと乱した。


「……事務所に所属すれば、他の男はおまえに近づけねーと思ったんだよ」

「……え?」
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