好きのちヒミツ

プロローグ 律side



「はよー律!」

急に肩をたたかれ体がビクッと震える。ギロリと後ろを向くと案の定そこにはしたり顔の旭《あさひ》が立っていた。

「おい朝からやめろよ、あれ今日は彼女と登校しないのか?」

いつもならそろそろ付き合って半年になる彼女と登校している旭が1人でいることに違和感を覚えた俺がそう尋ねると、

「今日は体調不良で休みなんだよ。だから俺今日は律と学校行くわー」

「へー、彼女がだめならダチってか。いい御身分なこった。てか俺一緒に行くなんか一言も言ってないぞ!」

「あれー、さっき一緒に行く前提で話してなかったか〜」

「うっせーな、分かったよ」

旭とは中学校で知り合い、今では1番のダチだ。部活も一緒で2人でバカやっては顧問に叱られる毎日。ずっとそんな日が続くと思って

た。中3の11月、

「俺、彼女できた」

嬉しそうな顔で俺に報告してきた旭に

「よかったじゃんか。先越されちまったなぁ」

なんて返したっけ。それからも旭とはちょくちょく遊ぶ仲で、今でもたまに遊んだりこうやって登校している。

そんな調子で電車に乗り込む。通学・通勤時間の電車は当然座れる席など空いてない。つり革に掴まりながら電車の車窓をじっと見つ

める。流れる町並みを眺めながら大きなあくびをひとつ。あっやべ、見られてねぇよな。急に不安になって振り返る左斜め後ろ。君は

全く気づいてない様子であくびをこらえてる。あくびしてるとこを見られてないことにほっとしながらも、君の視界に俺が入っていない

んだなと思うと少し残念。なんて考えても仕方ないよな。だって君はアイドル。俺はただの一般人。叶わないことなんて分かりきってる

し、君の恋人になる人は高身長で爽やかな俺なんて足元にも及ばないようなイケメンだろうな。
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