【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
「あなたもとても素敵よ。まさに王子様ね」
「惚れ直した?」
それはいつぞやの質問――――司教達を捕まえて、港から荷馬車に乗って領地に戻る際に交わした言葉。あの時は全然好きになれなくて同意する事はなかったけど――――
「…………そうね、惚れ直したわ」
私がそう告げると、ヴィルは驚いてこちらを凝視している。凄い視線を感じるわ……顔が熱い。
私は、まだ一度も彼に自分の気持ちを告げていない。
心の中では彼への気持ちはもう自覚しているし、好きな人だと思っているけど、面と向かってあなたが好きとは一度も言っていないのだ。
だからこの言葉を言うのは、私の中ではとても勇気がいる事だった。
「……オリビア」
「何?」
「こっち向いて」
「………………」
恥ずかしくて顔を反対に向けていたのに……お願いされたので、渋々ヴィルの方を見ると、切羽詰まった顔をしている彼の顔が目の前にあった。
「……もう1回聞きたい」
「……………………」
「お願いだ」
「……………………もう……とっくに惚れ直しているわよ」
私が言い終わるか言い終わらないか分からないくらいのタイミングで、彼の顔が近づいてきてキスの雨を降らせてきた。
何度も唇を啄ばんでくるので「……口紅がっ……っ」って抵抗をしても「黙って」と塞がれてしまう。
「まって、ヴィル…………っ……んっ……」
「……オリビア…………っ」
会場の中からは私たちの名前を呼ぶ声が聞こえた。
『ヴィルヘルム王太子殿下とそのご婚約者、クラレンス公爵令嬢が到着致しました!』
「んんっ~……!」
私の抵抗は虚しく、会場のその声とともに大きな両開きの扉が開かれていく――――――でもまだ彼のキスは終わりそうにない……
ようやくキスから解放された時には扉は全開になっていて、大勢の貴族達がシーンとして私達に釘付けになっていた。
「……はぁ……っ……」
お互いの吐息だけが響いている気がする。
それでもヴィルは悪びれる事もなく、この状況に動揺する私に構わず愛を囁くのだった。
「愛してる」
「……………………っ……降参よ。私も愛してるわ」
お互いに目線を絡ませて笑い合うと、気を取り直して腕を組み、入場していった。
物凄く恥ずかしくてしばらく顔の熱は上がりっぱなしだったけど、ヴィルがフォローしてくれて、王太子殿下の最愛として皆から羨望の眼差しを向けられる事になった。
その時の事は、後々まで語り継がれる出来事となる。
一時期冷え切ったと思われていた王太子殿下とその婚約者との仲を疑う者は、もう誰もいなくなったのだった。
この世界に転生してきた時は、絶対に結ばれたくない人だった。
それがいつの間にか今は愛する人になって、私の隣で笑っている。人生とは斯くも素晴らしいものかと思わせてくれた人。
すっかり「トワイライトlove」の小説の中身とは変わってしまったなと思いつつ、ひとまずバッドエンドは回避出来た事に胸を撫でおろしながら、その日は心ゆくまで皆と交流し、祝杯を交わしたのだった。