【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
「そう言えば船長に挨拶をしていなかったわね。ソフィアも一緒にくる?」
「うん!」
「それほど長い船旅ではないにしてもお世話になるから、挨拶をしておかなきゃ」
とは言っても船長室がどこかが分からない。
私たち2人はデッキをウロウロしながら中央部にある一室の前を通りかかると、何やら中から大きな声が聞こえてきて不穏な空気を感じたのだった。
ソフィアと顔を見合わせ、そっと扉を開いてみる……扉は木製だけれどそれほど重くはなく、すぐに開いた。
するとすぐ目の前に男性の後ろ姿が見えたので、もしかしたらこの人物が船長かもしれないと思い、声をかけてみる。
「あのー……こちら、船長室でしょうか?船長がどちらにいらっしゃるか、ご存じでしたら教えていただきたいのですが」
「はい?!」
さっきまで大きな声を出していたのは目の前のこの男性ね。
同じ声だし、勢いのままに大きな声でこちらに振り向いたその表情は怒りに満ちていて、喧嘩腰で返事をされてしまう。
まさか、この人がこの船の船長さん?
漆黒の長い髪を後ろで結び、左頬には一筋の傷がついているワイルドな美丈夫……王族専用の船の船長だけあって、身なりが整えられているので彼が船長なのかなと思うけれど、とても聞けるような雰囲気ではない。
いかにもこんな時に話しかけてくるヤツは誰だ?!と思っていそうな雰囲気なので、声をかけたタイミングが悪かったんだわ。
目の前のワイルドな男性は、ジロリとこちらを睨み、フイッと背中を向けられてしまう。
「……仕方ないわね、もう少し後でまた来ましょうか」
「うん」
ソフィアを怖がらせたくはないし、今はこの場を去った方が良さそうだと判断して、2人でその場を後にする事にした。
すると、扉が閉まる寸前、先ほどの船室の中から聞き覚えのある声が耳に飛び込んでくる。
「オリビア様!お久しぶりでございます!!」
私とソフィアが振り向くと、先ほどのワイルドな黒髪の男性や船員達に囲まれて、ほんの少し笑っているイザベルが目に飛び込んできたのだった。