【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
「炭鉱で働かされているのは、ほとんどがこの国の者ではないのね?」
「………………っ!」
図星だったのか言葉がない様子だった。
ソフィアの事はマリーとゼフに任せ、残りのメンバーで炭鉱まで案内してもらっている間に殿下からこの国の話を聞く事が出来た。
炭鉱開発を始めたのは10年ほど前からで、ようやく軌道に乗り始めたのは2、3年ほど前から。
ヴィルは幼少期から人身売買について調査していたと言っていたけれど、ハミルトン王国で人身売買が禁止されてもこれだけ横行しているという事は、我が国以外からも沢山の人々が連れて来られ、働かされているのだろう。
国王の決定は神の意志で絶対、分かっていてもどうにも出来ない……レジェク殿下も大変な立場ね。
「神の意志、神の鼓動…………うんざりね……」
「本当!神が怖くて聖女なんてやってられないもの」
マリアが明るくあっけらかんと言い放つので、思わずクスッと笑ってしまう。
「国賓として招いた方々にこんな事をさせたとなっては……」
私たちが急いで向かっている間もレジェク殿下はブツブツとぼやきが止まらない様子だった。
だんだんと腹立たしくなってきてひと言物申すべきかしらと思っていると、マリアが殿下の前に立ちはだかり、私の言いたかった事を代弁してくれたのだった。
「何よ、国の威信に関わるとでもいいたいわけ?それともパパ(国王)に怒られるのが怖いって言うの?」
「……わ、わたしはっ」
「他国から連れて来たとは言え、自国の民が苦しんでいるのに放っておく方が国の威信に関わるわよ。神だの、パパだの、くだらない。そんなものより、あなたはこの状況でどうするべきだと思ったのよ!!」
マリアの剣幕に皆が足を止め、静まり返った。
きっとそれはマリアがこの世界に来てから、ずっと大事にしていた気持ちなのだと思う。
マリアに問いかけられたレジェク殿下は、俯いていた顔を上げ、ポツリと呟く。
「このまま放っておくべきじゃないと思っています」
「そうこなくっちゃ!よし、じゃあ向かうわよ」
「はい」
そこからはブツブツとぼやく事もなく顔を上げ、迷わず炭鉱へと向かっていく殿下の背中は、前よりちょっぴり頼もしくなったような気がしたのだった。