【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
なんでって……まさかそんな質問が返ってくると思わず、言葉が出てこない。
この子は死にたかったって事?
「君は……皆が救助に向かっていなければ死んでいたのだぞ。礼の1つでも言うのが礼儀だろう」
ヴィルが私の横から諭すように彼に語りかける。
それはキツい言い方ではないけれど、彼の為に言っているようにも感じた。
でも目の前の男の子は、案の定ヴィルの言葉に反発し、思いもよらない言葉をぶつけてきたのだった。
「あんた達には分からない……助けられたところで一生地獄の日々が続くだけだ。こんな海の向こうの国に連れて来られて逃げ場もない。どうせ生き延びてもまた違う現場に放られ、死ぬまで働くだけなんだから死んだほうがマシなのに……!!」
「連れて来られたって……やっぱりあなたはこの国の民ではないのね?!」
「あんた達貴族がオレらをここに放り込んだくせに、白々しい!!そこまでして労働力を確保したいのか?!」
男の子はどんどん興奮し、毛を逆撫でた猫のように威嚇してくる。
他国からってどこから連れてこられたのかしら……送り返してあげたい。ハミルトン王国の民なら――――
「落ち着け、我々に爪を立てたところで解決にはならない。私はこの国の者ではないからな。連れて来られたというのなら、出身国はどこだ?」
「……隣りの国だよ…………ハミルトン王国」
「……っ! ヴィル!!」
私がヴィルの方を振り返ると、目を細めて喜びを隠しきれない表情をしていた。
「君の名は?」
「レイバン……何でおじさんがオレなんかの名前を聞くの?」
「おじさんではない、お兄さんだ」
「ヴィル!」