【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
皆がピタッと動きを止め、視線だけがマリアの方を向く。
声に聖力がこめられているのでは?マリアの声が頭に響くと、なぜか体が言う事をきかない。
マリアは迷わず一直線に、ラスの方へ向かって歩いていった。
そして彼の目の前で止まり、頬を両手で挟んだ。
「そんなに急激に動かないの!」
「にゃ、にゃんで(なんで)」
頬を思い切り挟まれているから、ラスの返事が可愛らしくなっているわ。
緊張感溢れる場面なのに、何だか気が抜けてしまうような……でもまだ皆体が動かないし、マリアはお構いなしに話を続けていった。
「あんた、気付いてないでしょうけど、体に小さな病を発病してるのよ」
「?!」
「本当はここの港に着いた時から気付いてたの……だからあんたに近付ける時を待ってた」
「にゃ、にゃんで(なんで)」
「ぷっ、あんた、にゃんでしか言ってない。とにかく大人しくしていて」
彼女が言葉を切ると体が光り始め、ラスとマリアがどんどん光りに包まれていく。
綺麗な光景……マリアの光りに包まれたラスは、何が起こっているのか分からない様子だけれど、表情は穏やかだった。
マリアは彼の病気を――――
やがて光りはラスの方へ移り、彼の体の中で小さな球体となり、弾けて消え去った。
「はい、おしまい」
「…………え?」
「聞こえなかったの?おしまいって言ったの。もう大丈夫よ、治したから」
「な……っ、どうして……!」
「どうしてって言われてもね……助けられる人を助けない人っていないでしょ」
「………………」
マリアが達観しすぎていて、凄い。
二人のやり取りを見守っていると、ラスの様子が変わり、体が震えだした。
「ふ、ふふっ、あっはははは!!」
「なによ、そんな笑うことないでしょ!」
「あははっ……あなたは本当に…………いえ、ここにいる人達みんな、お人好し過ぎです。僕を始末しようとすればいつでも出来たのに」