【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
声をあげて笑っているけれど、瞳は光を失くし、目が離せない。
こんな子供で大人より強く、何か任務を持って動かなくてはならない彼の境遇がどういうものなのか、想像もつかないけれど――――
「始末なんかしないわ。あなただって私たちを始末しなかったでしょう。それこそいつでも出来たのに」
「それは…………あんまりお人好しだから、バカらしくなっただけです」
私の言葉に視線を落とし、ポツリ、ポツリと話す彼からは、もう不気味な雰囲気は感じなかった。
「私たちはソフィアも大事だけれど、あなただって――――」
「ストップ!!…………僕の任務は今回は失敗です。一旦引き下がります」
私の言葉を遮ったラスは、瞬時にバルコニーへ移動し、柵の上に立ってこちらを見下ろした。
夜風に髪を靡かせながら穏やかな笑みを浮かべているけれど、なぜかこの時、彼を行かせてはいけない気がした。
でもどうやって引き止めればいいか分からない。
「……マリアさん、治療をしてくれてありがとうございます。では皆様、また会う日まで――――」
「ラス!!!」
フッと姿が消え、静寂に包まれた夜の闇に、私の声だけが響き渡る。
走り去る音すらも聞こえない……ヴィルの方を見ても首を振り、もうここに彼の気配はないという事だけは分かる。
引き留める事もかなわず、行ってしまった――――
結局彼の主はだれなのかも分からなかった。
レジストリック人だという事は分かったけれど……目的がソフィアだった事だけ。
また会う事が出来るのかしら。
今度はこんな形じゃない事を祈りたい……振り返ると、いつの間にかゼフがソフィアを腕の中おさめている姿が目に入ってきたので彼女の方へ歩み寄ると、ゆっくりと瞼が開かれていく。
「……オリビア、様?……ゼフ?」
「ごめんね、起こしちゃって」
眠そうな目を擦りながら、大きなあくびをするソフィアを見ていると、さっきまでの状況が夢だったのではないかしらと思えてしまう。
こんな状況でも起きなかったという事にも驚きだけど。
ラスの事、ソフィアには明日伝える事にしましょう。
ひとまずバルコニーへの扉をしっかりと閉じたところで衛兵がやってきたので、ヴィルが適当に誤魔化し、何とか事なきを得たのだった。
緊張で眠れないと思ったけれど、疲れてしまったのか、ソフィアを寝かしつけている間に自分も寝落ちてしまったらしい。
翌日にマリーに起こされるまで、全く起きる事無く睡眠を貪ったのだった。
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次回は一話のみですがラスクルSideです!^^
彼はちょっと苦しい状況ですが、第四部でも出てきますのでよろしくお願いいたします~~<(_ _)>