【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】

 病――――その言葉に大いに心当たりのある僕は苦笑するしかなかった。

 僕の頬を両手で包んだマリアは、優しく微笑み、聖力で僕を包み込んでいく。
 
 なんとなく感じていた体の違和感がなくなっていき、頭の霧が晴れていくように感じる……これが聖力――――

 やがて僕を包んでいた光は小さな球体になっていき、弾けて消えていった。

 そして彼女はあっけらかんとした表情で、治療は終わりだと告げる。
 
 なぜ……どうして、まだ出会ったばかりの赤の他人を助けるんだ?

 しかも僕は敵なのに――――そう思う僕に、またしてもあっけらかんと彼女は言い放つ。
 

 「助けられる人を助けない人っていないでしょ」

 
 その一言は僕にとって衝撃的な言葉だった。

 目の前に助けられる人間がいても助けない、むしろ面白がるのが高貴な身分の人間だし、僕みたいなよく分からない人間なんて助けないだろう。

 でも彼女の常識は全く違うらしい。

 あまりにもバカバカしくて声を出して笑ってしまう。


 「ふ、ふふっ、あっはははは!!」

 「なによ、そんな笑うことないでしょ!」
 
 「あははっ……あなたは本当に…………いえ、ここにいる人達みんな、お人好し過ぎです。僕を始末しようとすればいつでも出来たのに」


 そう、本当に……馬鹿な人たちだ。

 でも嫌いになれない。

 敵に情が湧いた時点で僕の負けだ。

 
 「僕の任務は今回は失敗です。一旦引き下がります。マリアさん、治療をしてくれてありがとうございます。では皆様、また会う日まで――――」


 皆に別れを告げると、後ろからオリビア嬢の叫び声が聞こえてきたけれど、振り切るように走り去った。

 もう会う事はないかもしれない……この失敗を主が許すとは思えないから。

 どうかソフィアと名付けられた少女が健やかな人生を歩んでいけますように。

 僕の願いはただそれだけだった。

< 674 / 690 >

この作品をシェア

pagetop