目と目を合わせてからはじめましょう
 それほど遅くならずに、マンションに戻ることができた。

 何だか無性に雨宮に会いたくなった。

 スマホに手を伸ばすと、雨宮のアイコンをタップする。

 『お疲れ様。ご飯、ちゃんと食べれてますか? くれぐれも気をつけてね』

 そんな、他愛もないメッセージを送る。もっと、気の利いたメッセージが送れないものかと自分でも呆れる。


 だが、すぐにスマホが音を鳴らした。雨宮からだ思ったのだが、珍しく悠矢の名が画面に光っていた。

 「もしもし、悠矢? 珍しいわね」

 「姉ちゃん?」

 スマホから聞こえる悠矢の声が、いつもより強張っている気がして、何だか胸騒ぎがする。

 「どうしたの?」


 「姉ちゃん、落ち着いて聞いて。雨宮さんが現場で怪我をした。今、救急車で運ばれた」


 「ええっ! 嘘でしょ……」


 急に目の前が真っ白になって、スマホを持つ手にさえ力が入らない。震える両手でスマホを握り直した。雨宮が怪我? 悠矢の言っている事が、頭に入ってこない。


 「いいか姉ちゃん。雨宮さんは大丈夫だ。運ばれた病院は、雨宮さんのマンションからはかなり遠い。これから、バスや電車で来ることは無理だ。明日の始発になる」

 「そんな……」

 やっと、状況が把握しはじめた。雨宮が怪我をするなんて、どうしたらいい?


 「朝まで、状況を待ってもいいと思う」

 「いやだよ、ここで待つなんて。すぐに行く!」

 「そういうと思った。父さんに送ってもらうよう頼むから、出かける支度して待っていて。しっかりな。雨宮太一の彼女なんだろ」

 「うん。ありがとう、悠矢」
 
 息もするのも苦しい大きな不安に、泣きそうになる目にグッと力を入れた。
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