目と目を合わせてからはじめましょう
 次の日、ホテルから俺の荷物を持った咲夜が、悠矢と一緒に退院の付き添いに来てくれた。

 「悠矢も悪いな」

 「いいえ。これも、俺の仕事ですから」

 そう言って、悠矢は退院の手続きに向かった。

 「本当に、退院出来てよかった」

 咲夜が、笑みを見せた。俺は、この顔に弱い。

 「早く、マンションに戻りたいな」

 「うん。そうだね

 俺が、何を意図として言ったのかは、気づかないのだろうな。


 悠矢の運転は、相変わらずのテクニックで、予定より早くマンションに戻る事ができた。

 部屋に入ると、ホッと息を吐くと同時に、咲夜を抱き寄せた。唇に軽くキスをし。だが、それだけやじゃ収まらず、ぎゅっと唇を押し付ける。

 咲夜が、俺の胸を拳で叩いた。

 「退院したばかりなんだから、少し休んで」

 「体力には自身があるから、大丈夫だ」

 「バカな事言わないで」

 咲夜が白い目で俺を見た。


 ソファーに座ると、咲夜がコヒーを淹れてくれているようだ。

 怪我人がコヒーを飲んでいいのか?と、一人でぶつぶつ言っているのが聞こえたが、コヒーでいいことにしたようだ。

 咲夜と並んでコヒーを飲む。こんな時間が幸せだと改めて自覚した。


 俺は、スマホを手にして、昨日から気になっていた事を口にした。

 「なあ、咲夜。俺が怪我した日、メッセージ送ってくれただろ? 何かあったのか?」

 咲夜の肩が、ぎくっと動いたのが分った。
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