目と目を合わせてからはじめましょう
 法要が終わり、湯之原のじいちゃんの家へ、毎年のごとく向かう。

 ママが、前日から仕込んで、美味しい料理を用意してくれている。

 「雨宮君」

 席についたじいちゃんが雨宮に声をかけた。耳元で、何か囁いている。

 雨宮が、眉間に皺を寄せたが、ふっと息を吐く。


 「そういう事だから、雨宮さんも座って」

 美和さんが、雨宮を促す。

 「そういう事だ」

 お義父様も言う。


 何故か私の隣の席が空いていた。

 「どういう事なの?」

 隣に座った雨宮に、小声で聞く。

 「安全が確保できたから、もう、警護はいらないそうだ。始めから、そのつもりだったんだろう」

 雨宮も小声で言う。

 「多分そうね」

 何も不思議に感じる様子もなく、席に並ぶ人達の顔を見ればわかる。


 「親父、来るなら来ると言ってくれ」

 雨宮が、隣に座るお義父様に言ったのが聞こえた。

 突然、法要に来た父親にも動じず任務を行う雨宮は、やはり責任感の強い凄いSPだと思う。


 いつもの年と変わらず、ママとパパのお見合い話に花が咲く。始めて聞くお義父様は、涙を流して笑っている。雨宮も笑っている。来年は、私達の話もネタにされそうだ。


 「準備は進んでる?」

 康介おじさんが、雨宮さんと私の間に入って言った。

 私達の結婚式は、来月、沖縄で行う事になっている。もちろん、康介おじさんのホテルだ。

 「なんとか…… 康介さんのおかげで、助かってます」

 「いや、俺は何も。ただ、楽しみなだけだよ」


 沖縄の思い出が蘇り、顔が熱くなる。今考えても、無茶苦茶な旅行だった。

 結婚式は、勿論ここに集まる皆を招待した。
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