目と目を合わせてからはじめましょう
 夕食は、ホテルの沖縄料理のレストランが予約されていた。
 部屋でうとうとしてしまい、予約の時間を少し遅れてしまった。すでに、皆揃っていて、オリオンビールのジョッキがテーブルに置かれている。

 私も、ビールを頼んだ。

 テーブルを見渡すと、どこか落ちつかない様子で雨宮が座っていた。いつもは、素早く食事を済ませて入口で立っているのに、皆と一緒に食事をしているなんてどうしたのだろう?

 いつもの事ながらワイワイガヤガヤ、くだらない話に大笑いしながら食事をする。

 「あれ、咲夜ちゃんもう飲まないの?」

 私は、ビールは一杯だけにして、ジュースを頼んだ。

 「うん、夜のライトアップしたプールで泳げるんだって」

 「へえー そうなの?」

 少し酔って、いつもに増してお喋りになってる友梨佳叔母さんが私に目を向けた。


 「そりゃいいが心配だ。雨宮君について行ってもらいなさい」

 じいちゃんが眉間に皺を寄せていう。

 「大丈夫よ。だいたい雨宮さんは、じいちゃんのSPでしょ。私に着くことは出来ないのよ」

 「ああ。さっき、雨宮君の任務を終了させてもらったんだよ」

 じいちゃんがビールのジョッキを片手にさらっと言った。

 「えっ。どうして?」

 「ああ、わしが狙われるわけないとわかったんだよ。あはははっ」

 今さら? 笑って済まされることなの?


 だから、雨宮は落ち着かない様子でこの席に座っているのだ。

 こんな離れた島で、解雇される雨宮も気の毒な話だ。そのえ、ボディーマッサージまで受けささせられて、私は裸を見られてしまった。最悪だ。思い出すと恥ずかしくて、雨宮の顔なんて見られない。


 なんだかイライラしてきた。

 「そうなの。なら尚更、雨宮さんにお願いするわけにはいかないでしょ。気の毒じゃない」

 「雨宮くんも、今夜の便で戻りたかったようだが、今からじゃ間に合いそうもないし。予定通り皆んなと一緒に帰ることにしたんだよ。すまないねえ? 雨宮君」

 「いえ。湯之原様の安全を確保することが、我々の役目です。任務が終了することは、喜ばしいことです」

 本当に真面目な人だ。怒ってもいい出来事だと思うけど。どちらにせよ、私には関係ない。


 「私はプールに行くわ。皆さんごゆっくり」

 私は、残りのマンゴージュースを飲み干すと席を立った。

 正直、イライラしても意味のないことはわかっている。パパや弟達なんて、私が席を立ったことにも気づかないのだから。
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