目と目を合わせてからはじめましょう
 予想通り、大きなガタイの雨宮が水から上がってきた。

 「待ってろって言っただろ?」

 雨宮の不機嫌そうな声が低くプールに響いた。

 「そうでした?」

 雨宮から離れるように、バタバタと足で漕いだ。


 「おい。上を見ろ。あれ、じいさん達じゃないのか?」

 雨宮が目を向けたホテルの窓を、私も見上げた。

 じいちゃんと、友梨佳叔母さんがこちらに目を向けている姿が見えた。私は、動かしていた足を止めた。確かに、雨宮の言う通り、それとなく仲良いふりをしていた方が、被害は少なくて済むかもしれない。


 私の浮いている浮き輪に、雨宮が手をかけた。

 「じいさん達が居なくなるまで、こうしていればいい」

 「うん」

 「ずっと、不思議だったんだが、あんた泳げないのか? 一日中、浮き輪で浮いてて、泳いでる姿を見てない気がするんだけどな」

 「うっ……  泳げるわよ。髪の毛が濡れるのが嫌なだけよ」

 全く、プールでまったりする予定が、イライラ、ハラハラ、ドキドキ、落ち着かない。


 早く、じいちゃん達に消えて欲しいと思いホテルを見上げるが、まだこちらを見ている姿があった。

 すると雨宮が、持っていたカクテルのグラスを奪うと、プールサイドのテーブルに置いた。

 そのまま、バシャバシャと泳いだかと思うと、浮き輪の下に潜り込んだ。
< 47 / 171 >

この作品をシェア

pagetop