目と目を合わせてからはじめましょう
 「きゃあーー」

 一瞬体が浮いたかと思ったら、そのままプールに投げ出された。

 うわーー
 溺れるーー
 死ぬ〜〜

 もうだめだと思った瞬間、顔が水の中から上がった。

 「はあー」

 なんとか息が出来た。


 「やぱっり泳げないんだろ」

 雨宮の声が耳元で響いた。

 「何するのよ! 信じられい、離して!」

 「ああ、俺は離してもかまないんだがな」

 雨宮が両手を上げた。

 「あっ」

 私が、雨宮の首にしがみ付いていた。

 「離していいぞ」

 離してしまったら、間違いなく溺れる。


 「うっ…… なんでこんな事するんですか?」

 しがみついたまま、雨宮を睨んだ。

 「大事な孫娘を溺れされるような男じゃ、信用できないと諦めるかもしれないだろ」

 「だからって! やっていい事を悪い事があるじゃない!」


 それでもと、ホテルの上を見上げたが、窓際にじーちゃんの姿は無かった。

 もう!


 「悪かったよ。だけどな、いくら浮き輪に浮いてるからって、酒なんか飲んでプールになんて入るな。泳げないんだから、命取りになるぞ」

 「こんな大きな浮き輪なんだから、落ちたりしないですよ」

 「今、落ちただろ?」


 「それは、あなたが落としたからでしょ! 浮き輪取ってよ」
 
 確かに雨宮の言う通り、飲んでプールは危険だった。でも、プールに落とされたことに腹が立つ。


 「ほら、手持っててやるから、浮いてみな」
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