目と目を合わせてからはじめましょう
 プールサイドに辿り着くと、先にプールを上がった雨宮が引き上げてくれた。

 「何か飲むか?」

 「うん」

 肩にふわりと何かがかかった。大きなビーチタオルだ。

 「しっかり拭かないと風邪ひく」

 「あ、ありがとうございます。あなたのタオルは?」

 「大丈夫だ、もらってくる」

 雨宮が、プールの入り口のカウンターへと向かった。


 「ねえ見て、あの人カッコよくない?」

 「私も思った。体格いいし、なんか色っぽよね」

 ビーチチェアに座っていた、若い女の子達の声が聞こえてきた。

 雨宮は、一般的に見てカッコいいんだ? なんだか複雑な気分だ。


 タオルを肩にかけた、雨宮が戻ってきた。

 「彼女とお揃いの水着だね。羨ましい」

 彼女達の声が聞こえてきた。そっか、お揃いの水着だった。普通に見たら、恋人同士に見えるよね。雨宮にも聞こえたのだろうか? いやな気分になっていなきゃいいけど……


 バーカウンターに並んで座り、私はカクテル、雨宮はジンジャエールを頼んだ。

 「お酒は飲まないんですか? もう、仕事じゃなくなったんでしょ」

 「ああ。基本的には飲まない。休みの日に少し飲む程度だ。あんたは、酒が好きなようだな」

 「まあ、見ての通り飲む家系ですからね」

 「そうみたいだな。でも、楽しそうで悪い酒じゃない」

 「皆が揃うのは、年に一回くらいですけど。仲良いんですよ」

 「仲良すぎて、悪巧みにも熱が入るんだな」

 「はあ、困ったものです。ご迷惑おかけしました」

 私はぺこりと頭を下げた。

 「いや、俺は別に…… ラッキーというか……」

 雨宮はしまったと言うような顔をして、ジンジャエールをグーッと飲んだ。

 「ラッキー? 今、何を思い出しました?」

 私は両手で胸を隠すと雨宮をジロリと睨んだ。

 「いや、何も…… 思い出してない」

 雨宮は、片手で両目を押さえた。
< 50 / 171 >

この作品をシェア

pagetop