目と目を合わせてからはじめましょう
 自分の分までジュースを頼んだつもりはなかったが、ウエーターが俺の分までトロピカルジュースを持ってきた。自分でもわかっている、こんなトロピカルなジュースが似合わない事ぐらい。手渡されたら持つしかなかった。

 「雨宮君、落ち着かないよ。君も座って飲んだらどうだね?」

 俺だって落ち着かない。

 「しかし、任務中ですので」

 「そのんな怖い顔していたら誰も近付かんよ。座っていてても警護はできるだろ?」

 「はあ」

 俺は、仕方なく近くの椅子に腰を下ろしたが、どちらにせよ落ち着かなかった。落ち着かないのは彼女も同じなのだろうか?

 「海で、泳いでくるわ」

 彼女は立ち上がると俺の貸したシャツを脱いだ。

 「ありがとうございます」

 彼女は丁寧にシャツを持つと頭を下げた。

 「いえ」

 水着姿に戻った彼女に、不安が押し寄せてくる。でも、ここからじゃ、ビーチの様子はあまり見れない。また、変な男が声かけてこなきゃいいが。

 ビーチチェアに置いてあったラッシュガードを彼女が羽織った。、始めから着ていろよ。


 ソファーで寝転がっていたじいさんが杖を持った。

 「おお、わしも行くぞ!」

 俺は、ビーチに行けることにほっとした。でも、その理由は今は考えない事にした。任務中だ。


 やはり、俺の不安は的中した。

 じいさんの横にいながら、気になるのは彼女の姿だ。呑気に浮き輪に浮いているようだが、流されたらどうするんだ? 

 やはり、彼女の元に、派手な海パンの日焼けした男が声をかけ始めた。

 はあー。声には出さずため息をついたのだが。


 「雨宮君は、泳ぎは得意かね?」

 「ええ。得意というほどではありませんが、警護に必要な程度には泳げます」

 「本当かね? 泳いで見せてくれるか? 信用が大事だからな」

 このじいさん何を言ってるんだ?


 いや、待てよ。
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