婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「ごめん、小春さん。 今のは秘書課の山本さんで、前から好意を向けられてた。尾けられてるのに気づいて振り向いたら、急に俺が好きだって言って迫られて…でも誓って接触はしてません。避ける時に、肩を押し返しただけで」

尾けられてって…ストーカー!私が感じた危険な香り、勘違いじゃなかった。さっきのは、抱きとめてたんじゃなくて拒絶してたってことだ。
ふっと力が抜けて、思っていることがついこぼれ落ちた。

「翔くんが他の女の子と仲良くしてるのを見るのは嫌だ」
「仲良くなんてしてません! 小春さんが嫌がること、絶対しないから。 …けど、不安にさせました」
「…私の知らないところでたくさん頑張って、翔くんのことを皆が知っていくのを見てると、応援したいのに、遠くに行っちゃいそうでたまに怖くなる」

翔くんはぶんぶんと首を横に振り答える。

「俺のこといちばん知ってるのは小春さんです! 俺が頑張れるのは小春さんがいるからです。 遠くになんて行きません。小春さんが離れたがっても、逃がしませんよ」
「私だって、翔くんのこと離したくない。ずっとそばにいたい」

不安。口にすれば、翔くんは全部受け止めてくれる。下手くそな気にしないフリなんてしないで、ぶつけてしまえばよかったんだ。彼は大きな愛で丸ごと包み込んで、暖かな気持ちにさせてくれるのだから。

「抱きしめてもいいですか? 1回帰ってシャワー浴びてからがいい?」
「そんなのいいから、今すぐ安心させて」

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