婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
途端、ふわりと大好きな香りに包まれる。翔くんが全身で伝えてくるようだった。

「大好き、小春さん。 ほんとはね、今日あなたに会いに行って伝えようと思ってたんです」
「なに?」

腕の中で顔をあげれば、愛おしそうに見つめる瞳と視線が重なる。

「俺と結婚してください。俺と会社を、一緒に守ってください」

じんわりと響く彼の低い声が心地いい。

「私…今までお酒飲んでたんだよ。なんで今なの…」
「そんな釣れないこと言わないで。 返事は?」

私は見つめ返して答えた。

「これからもあなたのそばであなたを支えさせてください。翔くんのことは、私が守るからね。末永くよろしくお願いします」

翔くんはにっと笑って、ちゅっと軽く口付けた。
どこから取り出したのか手には小箱を持っていて、私の左手をとるとダイヤモンドがあしらわれたそれを薬指に嵌める。

「バラの花束もあった方がよかったですか? 迷ったんですけど、邪魔になるかなって」
「うん。これで十分だよ。バラを持って歩くのは恥ずかしすぎる」

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