婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「いつもの居酒屋じゃなくて、今夜は別の所に行きませんか?」

あ、あぁ。なるほどね? 食事に行こうってことね。それくらいなら、仕事終わりにサシ飲みするのと何ら変わらない。はず。

「いいけど、どこに行くの?」
「秘密です。 言ったら多分、小春さんびっくりして拒否するから」

え、何それ怖い。どこに連れてく気? ただの食事だよね。信じていいんだよね。

「車、出しますね」
「お願いします…」

私は一抹の不安を覚えながらシートベルトをしめるのだった。


オフィスに戻ると、私たちを心配して待っていたらしい広報部の面々に問題なく打ち合わせを終えたことを報告し、業務に戻る。

デスクに着いてようやく一息。よかった。大事にならなくて。これが自分のミスで起こったことだったら、と思うとこれからする仕事に一層注意を図らなければと考える。今回は打ち合わせの日程に関することだったから事なきを得たけれど、他社と関わる大事な書類の不備とか期限に間に合わないとか、取り返しのつかないことを――
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